第1724回例会(2023.5.16)を開催しました

 

第1724回例会(2023.5.16)を開催しました

 

会長挨拶 山本会長

 

幹事報告 稲葉幹事

 

 

山田 正記会員 旭日小綬章受章 記念卓話

皆さん。こんばんは。本日は、皆さんお忙しいところ、私のために、お集まりいただき、本当にありがとうございます。こういう機会をつくって頂きました会長・幹事に心から御礼を申し上げます。昨年の11月1日に、私、先ほど会長からお話ありましたけれども、旭日小綬章を、受章しました。たまたま、コロナだったものですから、本来であれば、宮殿で陛下に謁見することになるのですが、コロナだということで、昨年の11月の秋の叙勲を含めて5回は、全部、そういうことがなかったのですね。今年は4月29日に、新しく春の叙勲が発表になりましたけれども、その方たちは、宮殿に招かれたと言っていました。それは、それで、陛下がいらっしゃるわけですから、ありがたい気はすると思います。たまたま、私のときは、そういう状態だったということです。それで、この、小綬章というのは、瑞宝章というのと、旭日章というのと、2種類ありますが、瑞宝章というのは、いわゆる公務員の方が、頂くものであり、旭日章というのは、我々のように民間人が、いただくものです。旭日章は、それぞれの業界で推薦されるわけなので、私の場合は、最高裁から推薦されました。今日、ここに写真をお持ちしましたが、それは、いただいた勲章を着用して、明治神宮に行って写真に撮ったものなのですが、普段は、そういうものは、身に付けませんので、その代わりに、この胸元の赤い徽章がありますよね。これが、代わりなのですね。要するに勲章をつける代わりに、つけるものです。ということで、今日は、一応、着用してきました。実物自体は、家のなかに、飾ってあるのは、谷口さんは、知っていると思います。家の修理をしたときに、来て頂きましたので。陛下から頂いた賞状と一緒に、飾ってありますので、興味のある方は、わが家に来れば(会場 笑)見ることができます。そういうことで、今日はですね、折角なんで、私が、弁護士としての業務の他に、公務を務めている、その一端を、少しお話させて頂きたいと思います。

私は、公務をいくつか務めているのですが、例えば原子力損害賠償紛争解決センターの仲介委員は、いわゆる福島の原発事故の関係で被害を受けた方に対して、東電との間に入って賠償の調整をするのですが、そういうことを、かれこれ10年以上やっています。それから、この中では福岡さんは、以前家裁の調停委員をなさっていましたが、私は、民事のほうの、簡裁の調停委員を、かれこれ、20年以上務めていますので、そういう話しもと、思ったのですが、私が携わっているなかで、国会で現在いろいろと、議論されている難民の問題についてですね、私、難民審査参与員を、務めていますので、それについて、若干お話をさせて頂きたいと思い、今日、入管庁のHPの資料を用意しました。難民は、どういうものか、ご存知だと思いますが、人種、宗教、国籍、政治的意見または、特定の集団に属するという理由で、迫害を受ける恐れがあるために、他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々です。最初に自分たちが難民申請をして、入管で認めないと判断した場合に、再度、「 こういう要件があるので、認めてくださいよ。」という

人を、審査をするのが、難民審査参与員の仕事なんですね。だいたい、全国で、100人くらいが、難民審査参与員として任命されています。3人一組で、審査しています。法曹関係者。つまり私のような弁護士とか、元裁判官とか、元検事。それに、国際法や国際情勢に詳しい専門家や、実際に難民の救済に携わっている人などが務めています。だいたい月に2回審査をする日があります。それで、だいたい、1回1,2件程度を処理しています。昨年1年間で私が処理したのが、32件くらいでした。審査請求人を、呼んで、本人の意見を聞いた上で、こちらから質問します。その後、難民として認めるべきか否かを我々が協議をして、決めます。そして意見書を、入管庁のほうに申し上げるという方式ですね。

それで、そこに数字がありますけれども、一時申請者がすごく増えたときがあるのです。これを見ると、平成29年が、ピークでした。今はずいぶんと落ち着いていますが、これは、当時は、難民の申請をすると6か月後に働くことができるような運用をしていたのです。それで、ずっと増えたのですね。今は、運用を改めて、申請者の数が以前の数字に戻っています。次の2頁を見るとわかるように、国によってかなり、凸凹があるんですね。これを見ると令和2年はトルコがトップ。令和3年はミャンマーがトップ。令和4年はカンボジアがトップ。 こうなっていますよね。国によってこういう申請者が多いところと、そうではないところがあるのですね。それから、在留資格を見ますと結構多いのが、技能実習生だった人。その中には、約束した賃金を支払ってもらえない人とか、あるいは、長時間労働させられているとか劣悪な職場環境から逃げているケースもあります。我々は、審査に当たっては、本国で、迫害を受ける恐れがあるという申し立てについて、具体的に聞いていくと、どうも、こちらが納得できるような説明ができないケースもあります。ただし、日本は、認定を厳密にやっていて、そこが、少し欧米の諸国と違うのかな。というのは、感想としてあります。そこに、日本で難民として実際に認められた数というのが、出ていると思うのですが、欧米諸国と比較すると本当に少ないんですよ。それは事実です。8頁を見てください。令和4年はアフガニスタンからの難民を認めたということで、結構、増えていますけれども、それまでは、だいたい100人に満たないでしょう。アフガニスタンでイスラム原理主義のタリバンが政権を奪って、それで、若干増えているのです。ただし、日本はやはり遠いから。日本まで逃げてくるというのは、そんなに簡単じゃないのです。ですから、この程度の数になっていますけれども、あのときは、近隣の国では相当難民がでています。概数でいきますと、アメリカがだいたい年間、難民を認めているのが5万人くらいでしょう。それからドイツも同じくらいですかね。フランスとか、イギリスとかというのも、若干、それより少ないくらいです。ただし、本当に多くの難民(避難民という方が正確かと思いますが)を受けているのはトルコなのですよ。トルコはこれまでに、300万人以上は受けて入れているはずですよ。というのは、隣国のシリアから難民が来ていますから。地続きの国は大変だなと思いますね。日本は、島国だから、なかなか外国から来るのが大変ですよね。パキスタンも多いですね。アフガニスタンからの難民が何百万単位ですよ。ドイツも多いことは多いのだけれど、今あげた国の方が、もっと多い。

ところで、話は変わりますが、外国人が沢山くるということは、良い面も悪い面もあります。何故かといいますと、日本のように、高齢化が進み、15才から64才までの生産年齢人口の割合が今どんどん縮小していますよね。特に女性が子供を産まなくなっていますから。生まなくなっていると

いうのは、結婚して子供を産んでいる人は、だいたい2人くらい生んでいて昔と変わらないのですが、結婚する人がだんだん減っているので、人口が縮小しているのは、事実ですよね。先進国というのは、例外はもちろんありますが、多かれ少なかれ、だいたいそういう傾向にあります。人口、特に生産年齢人口が減ると、何が起こるかというと、生産活動が低下しますし、それから、消費をしてくれないとなると、物を作っても、売れなくなってしまうので、やはりこれは、まずい状況なのだと思います。そういうことで、ドイツは、結構移民を入れています。人道的な理由もありますが、それによって、経済を活溌にさせています。それは、アメリカも一緒だと思います。日本は、1億2千万人いますけれども、人口推計からいくと、これからどんどん減ります。女性や高齢者をもっと活用しようとか言っていますが、それにも限界があります。そうすると外国人を入れることを考えなければならないけれども、日本は、今まで、どちらかというと同質的な社会で、外国人がそれほど身近にいない。共存すると言っても、そんな心構えが、皆にできているかどうかというと、疑問があります。戦前は、今の韓国とか、北朝鮮や、台湾は、日本の支配下にあり、日本が同化政策をとっていたのは皆さんご存じだと思います。ただし、今は、外国人に対して同化政策を取るのは、なかなか難しいと思います。一例をあげれば、トルコの今の大統領のエルドアンがかつてこういうことを発言したことがあります。トルコは、建国の父ケマル・アタチュルクが、国家と宗教を分離する世俗主義を採用した国ですが、エルドアンは、国民の多数がイスラム教徒なのでイスラム的公正を、掲げて、国民の支持を得ている人なのですね。その人が、ドイツで、トルコ人を前にして、「同化するよう求めることは、人道に対する犯罪だ。」ということを言ったので波紋が広がった。ドイツは、移民に対して、ドイツ語教育をやって、ドイツに同化するような政策を取ったのだけれど、実際は、トルコ人の中には、ある特定の地区に、みんな固まって住んでですね、その中ではドイツ語を使わなくても、トルコ語で、生活できるように、そういう人たちが結構増えたということがあります。その中に住んでいる限りは、トルコの仕来りを守ってですね、生活ができるわけですから、わざわざ、ドイツ語を学んだり、ドイツの文化を身につけたりしなくても、済んじゃうわけです。そうすると、なかなか、国として、まとめるのが、大変なんだと思います。ですから、外国人をたくさん入れると、難しい問題が出てくるわけです。ただ、そうは言っても、今の日本の現状だと、外国人を入れないと、このまま、今までの生活水準を維持するのは、なかなか難しいというのはコンセンサスになりつつあると思います。今、日本で議論されているのは、国際貢献の建前の下で、人権侵害が多発している技能実習制度は廃止するということは、方向性として打ち出しています。そして、特定技能制度がありますが、その2号は、家族の帯同が認められています、現在2号は2業種に限られていますが、それを10幾つかの業種に、増やそうとしています。そうすると、事実上それは、移民政策を取ることだと思います。政府は、いろいろ理屈をつけながら、移民は、入れないと言っていますが、背に腹は代えられないということなのだと思います。そうなると、そのなかで、いかに、我々日本人が外国人と一緒に、共生していけるように、していかなくてはならない。我々自身も、相当努力していかないと、統合なんてできないわけですよ。そうでないと、国のなかで、いろいろな文化の衝突みたいなことが起こりかねません。宗教が異なれば、食べ物でもタブーがあったり、毎日何回かお祈りをしなくてはいけないとか、それから、髪の毛を隠さなくてはいけないとか、宗教上のいろいろ仕来りがあるわけではないですか。そういうものも、きちんと、受け入れないと、外国人は、日本に、定着しないですよ。外国人に来てもらわないと困るわけでしょう。我々日本人は、普段宗教については、ほとんど考えていないと思います。その一因は、江戸時代に、徳川幕府が、いわゆる檀家制度というのをつくって、宗教をある意味馴化したことにあると思います。家康は、若い頃に、一向一揆で、相当、苦労したものだから、宗教というのは、怖いということが、身に染みてわかっていて、当時非常に勢力のあった一向宗を、西本願寺と、東本願寺に分断しましたよね。そして、檀家制度をつくって、みんな必ず特定のお寺に属さなくてはいけないという事にして、それでお寺に対してはお布施などによって、経済的基盤をきちっと整えたわけです。そういう政策をとったために、言い方は悪いかもしれませんが、葬式仏教みたいになったたわけですよね。宗教には、怖い側面があります。ある意味で、人間の生死を超えるようなことも、平気でできるわけですよね。あの世で、天国で、あるいは、極楽で、自分が、そこで、生を全うできるんだったら、この世で身を犠牲にしても構わないという事にもなるわけではないですか。ですから、そういう事を防ぐために、徳川幕府はそういう政策を取ったたわけで、そういう檀家制度がずっと現在まで続いているわけですので、日本人は、普段宗教を、あまり意識しないで生活していますよね。ところが他国では、特に一神教の国では、必ずしもそうではないですよね。そういう人たちが、沢山増えてくると、文化の衝突が起こったり、考え方の異なりでコンセンサスを得るのが難しくなったりすることも生じてくると思います。日本の場合は、明治維新後ですね、西欧文化がドーンと入ったときに、キリスト教も当然、入ってきたわけですよね。しかし、今日本でキリスト教徒の割合は、1%くらいでしょ。キリスト教は、明治以降知識層には影響を与えたけれども、国民にはほとんど定着しなかったのだと思います。余談ですが、韓国は、キリスト教徒の数が、人口の3分の1くらいいるでしょ。

あの国は、そういう意味で、キリスト教という一神教とうまく共存したのかもしれません。以上、結論から言うと、わが国は、これから移民を入れざるを得ない状況になりますが、そうすると、それに対して日本でも、それをきちんと受け入れるだけの心構えというか、そういうものが、必要なのかなと思っています。それから、私自身は、難民認定は、もう少し立証を軽くして、増やして良いかなと、思っています。ただし、それは、人道上の立場での外国人受け入れです。正規のルートは、特定技能のような形で入れていかないといけないので、それについては受け入れる側のほうも心構えをきちんと持たないといけないと思います。以上が今の私の考えです。そんなところで、皆さんは、どういう風にお考えになるかわかりませんが、そのような状況に、今の日本があるということを、よく理解して頂きたいなと、思います。以上でございます。どうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

2023年5月25日